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日本人1億2000万人割れ 「東京圏人口集中3割超え」の裏で進む賃貸オーナーの危機

内外不動産価値研究会2026/08/05

日本人1億2000万人割れ 「東京圏人口集中3割超え」の裏で進む賃貸オーナーの危機

この記事でわかること
・東京圏の人口が初めて3割を超えた、本当の理由
・埼玉・千葉が調査開始以来はじめて減少に転じた
・人口が309万人減っても世帯が増えたしくみと、2030年の折り返し
・「家賃保証」が減額請求で崩れる法的な理由
・修繕積立金が足りないマンションが36.6%という現実
・いま持っている人が確かめておきたい3つのこと

3割超えの中身は、集中ではなかった

日本人の人口が1億2000万人を割った。
総務省が2026年7月29日に公表した住民基本台帳に基づく人口動態調査で、2026年1月1日現在の日本人人口は1億1973万6483人。前年から91万6744人減り、1984年以来42年ぶりの水準に戻った。減少は17年連続で、減少幅は過去最大である。

その2か月前、2026年5月29日に総務省が公表した2025年国勢調査の人口速報集計は、この国の人口地図が塗り替わったことを示していた。2025年10月1日現在の総人口は1億2304万9524人。5年前から309万6575人、2.5%の減少と、人口が増えたのは東京都と沖縄県だけで、残る45道府県が減っている。

そして、東京圏(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)の人口は3698万6000人となり、全国に占める割合は30.1%。初めて3割を超えた。

一極集中がまた進んだ、と読みとれるが、速報値の中身を開くと、話はそう単純ではない。

実は神奈川・埼玉・千葉が、そろって減少

3割超えを支えたはずの東京圏で、実際に人口が増えたのは東京都だけ。しかも、その伸びは1.4%にすぎない。

残る3県は減少に転じている。埼玉県と千葉県の減少は、1920年に国勢調査が始まって以来はじめてのことだ。神奈川県は戦後初のマイナスとなった。愛知県も戦後初めて減った。

つまり東京圏のシェアが3割を超えたのは、東京圏が膨らんだからではなく、むしろ地方の縮み方が東京圏を上回ったから、割り算の答えが大きくなっただけである。分子が増えたのではなく、分母が減ったということなのだ。一極集中という言葉から思い浮かぶ「地方から人が吸い寄せられて首都圏が肥る」という構図とは、起きていることが違う。

これは市町村別に見るとさらにはっきりする。
全国1719市町村のうち人口が増えたのは161市町村、全体のわずか9.4%だ。残る1558市町村(90.6%)が減っており、10%以上減った市町村が全体の27.7%を占める。

増加数の上位には流山市(千葉県)、印西市(千葉県)、朝霞市(埼玉県)、海老名市(神奈川県)といった首都圏の街が並ぶ。一方で同じ神奈川県の横須賀市は2万3100人減り、横浜市も2万2651人減っている。県単位で3県を見ると、その中身は伸びる街と沈む街がくっきり分かれており、二極化は大都市と地方のあいだだけに限らない。同じ都道府県の中でも二極化が起きているのだ。

人口は309万人減っても、世帯は129万増加

一人暮らしの高齢者のイメージ。単身世帯の増加が住宅需要を支えてきた
増える単身の高齢者世帯

住宅と不動産を考えるうえで、この速報値で重要な数字は人口ではなく、世帯数だ。

2025年の世帯数は5712万5000世帯。2020年から129万4000世帯、2.3%増えている。人口が309万人減ったこの5年で、世帯はむしろ増えた。そして、1世帯当たり人員は2.15人まで下がり、すべての都道府県で減少した。

住宅の需要をつくるのは、人口ではなく世帯である。一人暮らしの高齢者が増えれば、人口が減っても住宅は必要とされる。この5年間、住宅需要が人口減ほどには落ちなかった背景にはそれがあった。

ただこれは、需要が守られたという話ではない。一人世帯が増えることで住宅需要が必要とされる局面は、いずれ終わる。単身化が進みきったあと、世帯数は人口とともに減り始める。
国立社会保障・人口問題研究所の推計では、一般世帯の総数は2030年の5773万世帯でピークを迎え、そこから減少に転じる。2050年には5261万世帯まで落ちる見通しだ。猶予は5年ほどしかない。いまはその手前の、それがいちばん見えにくい時期にあたる。

現在も家は建ち続けている。2023年住宅・土地統計調査によれば、総住宅数は6502万戸で、2018年から261万戸増えた。その一方で空き家は900万戸、空き家率13.8%といずれも過去最多・過去最高である。うち賃貸・売却用や別荘を除く、いわゆる放置されやすい空き家は37万戸増えた。人が減り、家が増える。この差が縮む理屈は、いまのところ見当たらない。

最初に影響を受けるのは地方の賃貸経営

家が増え続けることに対して最初に影響を受けるのは、地方で賃貸経営を行っている個人や零細のオーナーだろう。なかでも一括借り上げ(サブリース)契約をめぐるトラブルが、今後さらに増えると見られている。
こうしたサブリース契約はオーナーが業者に建物をまるごと貸し、業者が入居者に転貸する仕組みで、「30年一括借り上げ」「家賃保証」といった営業で土地を持つ個人や、零細企業に売られてきたものだ。
しかしながら、このサブリース契約には法律上の落とし穴がある。

サブリース契約は、建物の賃貸借契約である以上、借地借家法32条の賃料増減額請求の対象になる。最高裁は2004年11月8日の判決で、賃料自動増額特約が付いたサブリース契約にも同条が適用されると判示した。「賃料の減額を求めない」という特約を結んでいても、同条は強行法規と解されており、その特約で適用を排除することはできない。

つまり保証されているのは家賃額ではなく、家賃を払うという約束の枠組みにすぎない。周辺相場が下がれば、業者は正面から減額を請求できる。空室率が上がる地方ほど、その請求が現実になる。ローンの返済額は減らないから、差額はオーナーがかぶることになる。
賃貸住宅管理業法(2021年施行)でサブリース業者の勧誘規制や重要事項説明は義務づけられたが、それは契約前の説明を厳しくしたにとどまる。契約後に相場が下がったときの減額請求そのものを封じる法律ではない。

「限界マンション」は郊外から始まる

分譲マンションでは、別の形で同じ問題が出てくるだろう。

国土交通省の令和5年度マンション総合調査によれば、計画に対して修繕積立金が不足しているマンションは36.6%にのぼる。うち20%を超えて不足しているものが11.7%ある。修繕積立金の月額平均は1万3054円で、25年間で約1.8倍になった。それでも実情としては足りていない。

大規模修繕の足場が組まれたマンション。修繕積立金の不足が課題になっている
修繕費不足のマンションは大きな課題だ

住戸数が同じでも、居住者が高齢化し、年金生活者が増えれば、値上げの合意は取りにくくなる。空室や賃貸化が進めば、管理組合の総会は成立しにくくなる。資材費と人件費は上がっているから、必要な工事費だけが先に膨らむ。外壁タイルの剥離のような、放置すれば通行人に危険が及ぶ工事すら先送りされる――これが「限界マンション」と呼ばれる状態だ。

同じ調査では、築40年以上のマンションで70歳以上の世帯主が半数を超えたことも示されている。建物の老朽化と居住者の高齢化が同時に進む。しかもこの現象は、地価が支える都心より、価格が下がる郊外で先に起きる。修繕積立金を積み増せない物件は、売ろうとしても買い手がつかないため値を引く。結果、管理の質が資産価値に跳ね返る局面に入っている。

いま、やっておきたい対策

分譲マンションの所有者の立場から、やることは3つに絞られる。

1つは、自分の物件を「県」ではなく「街」でどちらに振れたかを確かめること。たとえば、神奈川県全体としては人口が減ったが海老名市は増えている。一方、横須賀市は2万人以上減った。県単位の平均は、もう判断材料にならない。総務省統計局のサイトで市区町村別の速報値は誰でも確認できるので確認してみてほしい。

2つめは、サブリースであれば契約書の賃料改定条項を読み直すこと。何年ごとに見直すのか、減額請求が来たとき交渉の材料になる資料を自らが持っているか。相場を示す資料がなければ、業者の提示額がそのまま通りやすい。

3つめは、修繕積立金の残高と長期修繕計画の照合である。計画上の積立額と実際の残高がずれていないかの確認だ。次の大規模修繕までに足りるかについては、管理組合に資料を求めれば出てくる。第三者による建物検査(インスペクション)を入れるなら、売りに出す直前ではなく、まだ手を打てる時期にやっておきたい。

人口の集中も郊外の縮小も、個人の力で止められるものではない。国勢調査の確定値は2027年にかけて順次公表される。それらの数字はさらに細かくなるが、風向きが変わることはおそらくない。

問われているのは、この流れを止められるかどうかではなく、縮んでいく街の家をどう軟着陸させるかだ。
「つくっては壊す」を繰り返してきた戦後の住宅政策は、900万戸の空き家という形で答えを突きつけられている。次に何を建てるかより、いま建っているものをどう畳むか――そちらの技術と制度のほうが、これからの日本ではよほど難しい。

そしてその先に控えているのが、大都市圏に建てられてきた分譲マンションの老朽化だ。大規模修繕と建て替えをどうするか――郊外の空き家に続く、次の宿題である。

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この記事を書いた人

内外不動産価値研究会

内外不動産価値研究会

政治・経済、都市開発・不動産、再開発等に関係するプロフェッショナル集団。主に東京の不動産についてフィールドワークを重ねているが、再開発事業については全国各地の動きをウォッチしている。さらにアジア・欧米の状況についても明るいメンバーも参画している。

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