大学卒業後、メーカーを経て広告代理店にてPR・広報のコンサルとしてと企業支援に従事。ところが新型コロナと50歳の節目が重なり、「このまま真面目に働いていていいのか?」と自問自答。一念発起し脱サラして、FIREを目指してスイングトレーダーに転身。現実はまだ“たき火レベル”だが、日々発表される決算書とチャートの動向と格闘している。最近ではAIを駆使し、銘柄研究を行っている。
同じ相場が、逆向きに効いている2社
4日の日経平均は202円63銭高の6万3957円53銭。前日の607円安から反発した。ただ中身を見ると、上がった株と下がった株の顔ぶれがはっきり分かれている。
きっかけは7月31日だ。日米が協調して円買い介入を実施し、それが3日朝に発表された。ドル円は157円台から155円台へ2円半動いた。円高は輸出企業の採算を直接削るので、自動車が売られた。スズキは3日に6.74%安、4日も2.13%安で、3営業日では11.59%安になっている。
一方で半導体・電子部品には買いが入った。ロームは4日に4.55%高、3営業日では16.29%高だ。太陽誘電は同じ3日で17.96%高、ミネベアミツミは9.54%高。円高で採算が悪化するのは電子部品も同じはずだが、そちらはAIサーバー向けの需要という別の材料が上回っている。
本日はこの両極が、同じ日に決算発表を迎える。スズキとロームが並ぶ日ということだ。
この2社は、決算で見るところが違う
同じ「1Q」でも、この2社で確認すべきものは同じではない。
スズキは数字より前提を見る。今期計画は円安を前提に置いて組まれている。1Qの期間(4〜6月)は円高が進む前なので、数字自体は悪くない可能性が高い。問題は、会社が計画の前提為替をどう置き直すかだ。
ロームは数字より反応を見る。前期に過去最大の赤字を出し、今期は黒字転換の計画を出している。この落差はすでに知られているので、1Qの数字が計画どおりでも株価が動くとは限らない。3日で16%上げた地点からの発表なので、「良い数字が出たのに下げる」という出尽くしの形になりやすい。
私が『10万円を1年で100万円にする株式投資術』に書いたのは、決算は「またぐ」ものではなく「結果と反応を見てから動く」ものだということだ。今日のような日はとくにそうだと考えている。
☆【注目度S級】ローム(6963/電気機器)3月期1Q プライム
見どころ:前期2026年3月期は、SiC(炭化ケイ素)パワー半導体の生産設備を中心に1936億円の減損損失を計上し、純損益は1584億2400万円の赤字になった。過去最大の赤字額だ。EV市況の低迷でSiCの需要見通しが下振れたことが理由になっている。ただ営業損益の段階では108億6400万円の黒字を確保しており、赤字は減損という一過性の要因で作られている。ここを取り違えると1Qを読み違える。
1Qで見る数字:今期2027年3月期の会社計画は、売上高5100億円、営業利益300億円、純利益290億円。営業利益は前期の108億6400万円から176.1%増という計画になる。ここで注意したいのは、前1Q(2025年4〜6月)の営業利益がわずか1億9500万円だったことだ。今期計画300億円に対して0.65%にすぎない。つまりこの会社の1Qは、進捗率で読むと実態を大きく外す。見るべきは前年同期比のほうで、前1Qの1億9500万円をどれだけ上回ったかが判断材料になる。
スイング目線:4日終値は4525円で前日比4.55%高。3営業日では16.29%高と、決算発表の前にすでに大きく上げている。上げてきた地点での発表は、良い数字が出ても「織り込み済み」で下げる形になりやすい。逆に計画に届かない数字が出れば、上げたぶんの反動が出る余地もある。どちらに転んでも値幅は出やすい。
Point:減損を出し切った会社は、翌期の数字が良く見える。前期の分母が潰れているからだ。私が見るのは、その見かけの改善が本業の回復とどこまで重なっているかで、そこは1Qの営業利益と、会社が計画を据え置くかどうかに表れる。3日で16%上げた地点からの発表なので、数字が良くても素直に上がるとは限らない。私なら発表後の反応を見てから動く。
◎【注目度A級】スズキ(7269/輸送用機器)3月期1Q プライム
見どころ:前期2026年3月期は、売上収益6兆2929億6700万円で8.0%増、営業利益6229億900万円で3.1%減。増収減益だった。今期2027年3月期の会社計画は、売上収益6兆8000億円で8.1%増、営業利益5700億円で8.5%減、純利益3800億円で13.5%減。売上は伸ばしながら利益は落とす計画で、会社は人財や技術への投資拡大を理由に挙げている。
1Qで見る数字:前1Q(2025年4〜6月)の営業利益は1421億3600万円だった。今期計画5700億円に対して24.9%にあたる。1Qで24〜25%台に乗れば計画どおりのペースということになる。ただ今回はもう1つ見るところがある。会社が計画の前提為替をどう置いているかだ。5月14日の計画は7月31日の介入より前に組まれているので、円高が進んだいまの水準とはずれている可能性がある。前提が動けば計画も動く。
スイング目線:4日終値は1904円で前日比2.13%安。3営業日では11.59%安になっている。7月31日の日米協調介入が3日朝に発表され、ドル円が157円88銭から155円23銭まで動いたことで、自動車株がまとめて売られた流れの中にある。下げの理由は前期の業績ではなく為替なので、1Qの数字だけで下げ止まりを判断するのは難しい。
Point:円高で売られた株が決算発表を迎えるとき、数字が良ければ戻るとは限らない。市場が見ているのは1Qの実績ではなく、これから先の為替前提だからだ。3日で11%下げているぶん、戻ろうとする力も働く。私なら、下げ止まりを株価の下げ幅ではなく、発表後の出来高を伴った反発があるかどうかで確かめる。落ちてくるナイフを掴まない、というのはこういう場面のことだ。
★【要注意D級】日東紡績(3110/ガラス・土石製品)3月期1Q プライム
S級・A級は誰もが見る。ここでは、その陰に隠れていて、しかも値が大きく動きやすい一社を挙げておく。注目度ではなく、値動きの荒さで見るべき銘柄という意味だ。
見どころ:ガラス繊維の会社で、電子材料事業がAIサーバー向けの基板材料として伸びている。前期2026年3月期は売上高1182億2900万円で8.4%増、営業利益208億1900万円で26.6%増、純利益417億7000万円で225.4%増だった。この純利益の伸びが極端なのは、営業利益の2倍の水準まで膨らんでいるからで、本業の伸びだけでは説明がつかない。3Q時点で純利益が351億1000万円まで一気に増えており、一過性の利益が入っていると読むのが自然だ。
1Qで見る数字:今期2027年3月期の会社計画は、売上高1370億円で15.9%増、営業利益260億円で24.9%増、経常利益260億円で20.7%増。ここまでは増益計画だが、純利益は170億円で59.3%減になる。前期の純利益に一過性の要因が入っていた裏返しだ。上期の計画は売上高679億円で18.3%増、営業利益126億円で33.3%増なので、1Qで営業利益が60億円前後に乗るかどうかが1つの目安になる。純利益の減少だけを見て「業績が悪化した」と読まないこと。この会社で見るべきは営業利益のほうだ。
スイング目線:4日終値は3170円。20営業日の日中値幅は7.19%で、本日発表する178社のなかで最大だ。売買代金は259億4000万円あり、流動性の面では入りやすい。直近20営業日では9.82%安だが、直近5営業日では9.84%高と、ここ数日で買われている。値幅が大きいということは、上にも下にも同じだけ動くということでもある。
Point:要注意D級は「業績が悪い株」ではなく「見ている人が少ないのに値が動く株」だ。S級のロームは情報が行き渡っていて、良い材料も悪い材料もあらかた織り込まれている。日東紡はそうではないぶん、数字が出た瞬間に評価が変わる余地が残っている。私が中型株を見るのはこの理由からで、それは『10万円を1年で100万円にする株式投資術』にも書いた。ただ、そこに要注意と付けているのは、動くということは逆にも同じだけ動くからだ。当日の値幅が7%出る銘柄は、読み違えたときの戻りも速い。
○【注目度プラス】
上の3社ほど深くは追わないが、数字の背景を知らずに1Qや2Qだけ見ると読み違える会社を挙げておく。178社もあると、こういう銘柄が一覧の中に埋もれる。
資生堂(4911/化学)12月期2Q 前期2025年12月期は営業損益が287億8800万円の赤字、純損益も406億8000万円の赤字だった。今期2026年12月期の会社計画は営業利益590億円、純利益420億円で黒字転換を見込む。12月期なので本日出るのは2Q=上期だ。1Qの営業利益は123億3300万円で、通期計画590億円に対して20.9%。上期で40%台に乗るかどうかが黒字転換計画の答え合わせになる。
SUBARU(7270/輸送用機器)3月期1Q 前期2026年3月期は営業利益401億2000万円まで落ちた。米国の追加関税と環境規制関連の費用が重なったためで、3Q時点の通期計画1300億円からも大きく未達だった。今期計画は営業利益1500億円で273.9%増と回復を織り込んでいる。ただ4日終値2584円は3営業日で8.47%安。スズキと同じ円高の直撃を受けている。回復計画の前提が為替でどこまで揺れるかが1Qの焦点になる。
日本郵船(9101/海運業)3月期1Q 7月30日に今期計画を上方修正したばかりだ。経常利益を1850億円から2500億円へ35.1%引き上げ、純利益は2400億円とした。コンテナ船の運賃市況が想定を上回っていることと、円安の進行が理由に挙がっている。修正の直後に出る1Qなので、数字そのものより「修正した水準に見合う進捗が出ているか」を見る決算になる。なお修正理由に円安が入っているぶん、その後の円高がどう効くかは次の四半期以降の話だ。
太陽誘電(6976/電気機器)3月期1Q 前1Q(2025年4〜6月)は営業利益31億4200万円、純損益は8億7600万円の赤字だった。前期通期では営業利益199億9600万円まで戻しているので、この会社の1Qは期初として薄い時期にあたる。4日終値1万290円は3営業日で17.96%高。7月31日には売買が極端に細り、翌営業日から急増している。上げてきた地点での発表という点はロームと同じ構図だ。
花王(4452/化学)12月期2Q 前期2025年12月期は売上高1兆6886億3300万円、営業利益1640億6900万円。今期計画は売上高1兆7500億円で3.6%増、営業利益1820億円で10.9%増と、着実な増益計画になっている。1Qの営業利益449億300万円は通期計画に対して24.7%で、ペースとしては計画線上だ。12月期なので本日は2Q=上期。上期で50%前後に乗るかどうかを見る。
【本日発表予定】
本日は178社が決算発表を行う。プライム115社、スタンダード55社、グロース8社。決算種別では1Qが147社と大半を占める。以下は上で取り上げた8社を除いた、プライム上場の主な銘柄だ。
情報・通信業
メルカリ(4385/情報・通信業) 6月期本決算 ── 6月期なので本日は通期。3Q時点の通期計画は売上高2200億円だった。
ディー・エヌ・エー(2432/情報・通信業) 3月期1Q ── 売買代金18億円。直近20営業日で7.02%安。
カカクコム(2371/サービス業) 3月期1Q ── 価格.com・食べログ。内需系で為替の影響を受けにくい。
BIPROGY(8056/情報・通信業) 3月期1Q
スカパーJSAT(9412)/ 朝日放送グループHD(9405)/ JMDC(4483)/ クロスキャット(2307)/ キューブシステム(2335)/ クレスコ(4674)/ TDCソフト(4687)/ アルファシステムズ(4719)/ コロプラ(3668)9月期3Q / アバントグループ(3836)6月期本決算 / インテージHD(4326)6月期本決算 / CIJ(4826)6月期本決算 / インテリジェント ウェイブ(4847)6月期本決算
電気機器
ミネベアミツミ(6479/電気機器) 3月期1Q ── 4日終値3847円は3営業日で9.54%高。電子部品高の流れに乗っている。
オムロン(6645/電気機器) 3月期1Q ── 4日終値5538円で前日比3.32%高、3営業日で7.14%高。
セイコーエプソン(6724/電気機器) 3月期1Q ── 前期は営業利益495億5800万円。前1Qは141億3600万円だった。
ジーエス・ユアサ(6674)/ ホーチキ(6745)/ タムラ製作所(6768)/ 山一電機(6941)/ 図研(6947)/ 日本シイエムケイ(6958)/ ニチコン(6996)/ ミツバ(7280)
機械・鉄鋼・金属
JFEホールディングス(5411/鉄鋼) 3月期1Q ── 前期は営業利益1122億300万円。前1Qは162億6100万円だった。
神戸製鋼所(5406/鉄鋼) 3月期1Q ── 前期は営業利益1298億8300万円。
IHI(7013/機械) 3月期1Q
THK(6481/機械) 12月期2Q
オークマ(6103)/ タクマ(6013)/ 酉島製作所(6363)/ 荏原実業(6328)12月期2Q / 日本冶金工業(5480)/ 新日本電工(5563)12月期2Q / トーカロ(3433)/ 東洋製罐グループHD(5901)/ パイオラックス(5988)/ リョービ(5851)12月期2Q / アーレスティ(5852)
化学・医薬品・食料品
アステラス製薬(4503/医薬品) 3月期1Q ── 4日終値2168円は3営業日で5.18%安。
キッコーマン(2801/食料品) 3月期1Q ── 前期は営業利益759億4000万円。売買代金73億円と厚い。
三井化学(4183/化学) 3月期1Q
ユニ・チャーム(8113/化学) 12月期2Q
明治ホールディングス(2269/食料品) 3月期1Q
日油(4403)/ 三洋化成工業(4471)/ エステー(4951)/ 荒川化学工業(4968)/ 生化学工業(4548)/ 江崎グリコ(2206)12月期2Q / なとり(2922)
建設・不動産・陸運
鹿島建設(1812/建設業) 3月期1Q ── 売買代金93億円。当日の建設業7社では最大。
西日本旅客鉄道(9021/陸運業) 3月期1Q
京浜急行電鉄(9006/陸運業) 3月期1Q
安藤・間(1719)/ 東急建設(1720)/ 高松コンストラクショングループ(1762)/ 大末建設(1814)/ ライト工業(1926)/ ダイダン(1980)/ SREホールディングス(2980)/ 三重交通グループHD(3232)/ 富士急行(9010)/ AZ-COM丸和HD(9090)
商社・小売・金融・その他
メディパルホールディングス(7459/卸売業) 3月期1Q
アルフレッサ ホールディングス(2784/卸売業) 3月期1Q
博報堂DYホールディングス(2433/サービス業) 3月期1Q
全国保証(7164/その他金融業) 3月期1Q
銀行7社(めぶきFG 7167 / 横浜FG 7186 / プロクレアHD 7384 / 百十四銀行 8386 / 佐賀銀行 8395 / 名古屋銀行 8522 / 北洋銀行 8524)/ 稲畑産業(8098)/ 東邦HD(8129)/ 三信電気(8150)/ 東陽テクニカ(8151)9月期3Q / 立花エレテック(8159)/ 高千穂交易(2676)/ アルコニックス(3036)/ ヤマエグループHD(7130)/ エディオン(2730)/ サンマルクHD(3395)/ 王子HD(3861)/ 日本製紙(3863)/ レンゴー(3941)/ グンゼ(3002)/ 帝国繊維(3302)12月期2Q / 東海カーボン(5301)12月期2Q / フジミインコーポレーテッド(5384)/ 武蔵精密工業(7220)/ タチエス(7239)/ プレス工業(7246)/ A&Dホロンホールディングス(7745)/ 松風(7979)/ グリムス(3150)/ 静岡ガス(9543)12月期2Q / 日本管財HD(9347)/ イチネンHD(9619)/ 山田コンサルティンググループ(4792)/ 新日本科学(2395)
このほかスタンダード55社、グロース8社が発表する。
今後の決算発表予定──またぎ注意
決算書Watchでは、またぎを推奨していない。
上がる株であれば、決算発表後も伸びるだろうから、そこで買っても遅くはない。
逆であれば、損切りしてマイナスを確定したほうがよい。
ただし、配当を目的にしている場合は、その限りではない。
今週はここからが本番になる。明日6日は323社、明後日7日は680社と、この2日で1000社を超える。7日は今シーズンの最大の山だ。持ち株の決算発表日を今日のうちに調べておきたい。
| 日付 | 発表社数 |
| 8月5日(水) | 178社 |
| 8月6日(木) | 323社 |
| 8月7日(金) | 680社 |
| 8月10日(月) | 244社 |
| 8月12日(水) | 203社 |
680社が1日に出るということは、その日は個別の決算を1社ずつ吟味する時間がないということでもある。前日までに、自分の持ち株がどの日に出るかだけは確かめておく。そのうえで、またぐか降りるかを決める。
いま円高で下げている自動車や、逆に上げている半導体・電子部品を持っているなら、なおさらだ。相場の方向と決算の方向が食い違ったとき、株価は決算より相場に引っ張られることがある。今週はその食い違いが起きやすい週だと考えている。
損をしない、あるいは損を最小限にすること。それが私の基本的な考え方だ。
※本文中の決算数値は、各社が公表した決算短信(スズキ:2026年3月期決算短信〔IFRS〕、日東紡績:2026年3月期決算短信〔日本基準〕、ローム・資生堂・SUBARU・日本郵船・太陽誘電・花王・その他各社:各社2026年3月期または2025年12月期の決算短信および四半期決算短信)にもとづく。株価・出来高・日中値幅・売買代金はJPX公式のJ-Quants APIによる2026年8月4日終値時点の値。日経平均の終値と4日の市況、および7月31日の日米協調介入に関する報道は共同通信および各社報道による。ロームの減損損失額と赤字理由、日本郵船の業績予想修正、SUBARUの今期計画は各社の開示および報道にもとづく。
※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。
記載内容は将来の株価や利益を保証するものではありません。
株式の売買はご自身の判断と責任において行ってください。
コマンドY/スイングトレーダー
著書『10万円を1年で100万円にする株式投資術』。Gold beans.で毎日、決算短信のポイントを解説。
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